失語症記念館
南イタリアの旅

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17.アグリジェントのカタツムリ

2002年 5月:

 アグリジェントの旅は「ああ南イタリアね!」と実感させてくれる暑さであった。
神殿の横をふと見れば、アロエを巨大にして葉っぱの縁にとげとげをつけたようなサボテンがニョキニョキと生えている。その葉っぱ・・・茎かな?サボテンだったら葉っぱが棘になってしまったというし・・・。まあ、その葉っぱのようなものに、観光客が自分の名前など彫って記念にした跡などもたくさんある。で、よく見るとその葉っぱのようなものに沢山のカタツムリがくっついている。ここの風土がカタツムリにとって過ごしやすいとは思えないのであるが、一体なぜこんなにカタツムリが居るのだろうか?

 夫はつまらないものに気を取られていないで神殿を見ろというが、あとで調べてみようと思って写真を撮っておいた。
 なぜカタツムリが気になるか。実はまゆみ、エスカルゴが大の好物である。カタツムリの中で食べられる種類は非常に限られ世界中で4種類だけだという。日本国内のカタツムリの種類でけで

サボテンとかたつむり

サボテンとかたつむり

アグリジェントのかたつむり

アグリジェントのかたつむり
500とも800ともいわれているのに。そこら辺にいるカタツムリには毒があるという。「なんかそこら辺にいるカタツムリって何食べているか分からないから食べる気にならないなぁ。」なんてのんきなことを言っていたまゆみであったが、もしもう少し食い意地が張っていたら、今頃はお陀仏になっていたかもしれない。しかも「あの人でしょう?カタツムリ捕まえて食べて死んだって人。」などといつまでも噂されて。
 私が子供の頃は青梅を食べて死んだ人が時々いたが、今は余り聞かない。青梅は危ないって、浸透してしまったからだろうか?

 てくてくてくてく、神殿を巡る。でも帰るバスの時間があるのでそれも頭の片隅・・・いいえ、中心に入れて早めに切り上げる。私的には十分に歩いた。でも十分に見たかは不明。

 神殿入り口から又来た方向に向かって歩き始める。ガイドブックに書いてあったけれど、本当に日陰が無い、ない、ない!
 私達が埃っぽい道路の端をてくてく歩いていく横を冷房の効いた大型観光バスがドイツ人やアメリカ人を乗せてブロロ−ンと通り過ぎていく。
「ううう・・・あのバスにまゆみも乗りたい。何で私達は路線バスなの?」
「これが本当の旅なんだろう?楽しいだろう?」
「楽しい・・・(????)(けれど・・・冷房の効いたあのバスでブブブーンて・・・行きたい・・・)いやだよう、やっぱりまゆはあっちの方がいいよう!」
「そんなこと言ってもだめだよ。ほらちゃんと歩きなさい。轢かれちゃうぞ。」
てくてくてくてく・・・やっとついたバス停はさっきのハエぶんぶんのバールの前。
なのにバスが来ない。しかもどこにもバス停の印がない。心配になってバス停を探しにずっと先まで走ったまゆみ・・・空振り!夫にお店に行って確認してこいと言ったら
「この前にいれば必ずバスは来るから心配するなって言ってたよ。」
・ ・・心配するよ、だってイタリアじゃないの!
 あれか?と何台のチャーターバスを羨ましがりながら見過ごしたことか・・・。やっと来た小型路線バスに乗り込み一息。バスの窓から入ってくる風は熱く又埃っぽい。
待っていた時間に比べて駅に着くのはあっという間。観光シーズンになると混むかもしれないが、田舎だから滅多に車が通っていないので、混雑はいっさい無し。
バスから降りると朝着いた遠距離バス乗り場を目指して又歩き出す。バス乗り場周辺は神殿なんて全く見えないので、何となくさっきまでいた光景が不思議になってくる。
ワープしたみたいな気分。
「ペルパレールモ?・・・ペルパレールモ?」
「はいはい、そうだよ、マダムこのバスに乗りな。」
「ゲラッツィエ!グラッツィエ!」
パレルモ行きのバスに乗り込むと本当に一安心。これに乗っていれば必ず帰れるパレルモへ。今度は終着だから、あとは眠って待つだけさ。
ああでも今朝5時にシャワーを浴びて、6時にホテルを出て・・・なんだか信じられない。今日1日がすでに何日間にも思える。あの赤茶色っぽい神殿群もなんだかもう遠い昔の出来事のよう・・・。
私達が日本を出て、イタリアに着いてからまだ3日目だなんて・・・頭がクラクラしてきた。今回の旅は確か18日間だったんだっけ?あと2週間も毎日こんなに歩き回るの?毎日こんなに事件に巻き込まれるの?まいに・・・・

「ほら、もうすぐ着くよ!起きなさい。ほら、起きなさい。」
ああ、私いつの間にか寝ちゃったんだぁ。あらなんだかひどく懐かしい気がするパレルモ駅前。やっと帰ってきたんだ。

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