失語症記念館
南イタリアの旅

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18.やっと夕食

2002年 6月:

 アグリジェントから2時間余り、やっと戻ってきたパレルモ駅前。
「今晩こそはレストランで夕食を食べるぞー!寝るなよ。寝ても今夜こそは絶対ご飯 食べに行くぞー!」気合い入りまくりの夫である。
「シチリアに来てちゃんとしたものを食べていないんだ。これでは悔いが残るっても んだよ。」
「フランチェスコのところで食べたでしょ?」
「ノン、ノン!ランチ イズ ランチ!しょせんランチなんだよ。夕食は違うんだ。
ディナーだからね。」・・・よく分からない。でも夕食に対する気合いがみなぎりす ぎているのだけは十分伝わってきた。怖いほどだ。

 タクシーに乗ってホテルへ。まずは汗と埃にまみれた体をシャワーで洗い落としま しょう。
「君が先にシャワーを浴びると絶対ベッドに入って終わりだから、僕が先に入るよ。
君はソファーに座って待っていなさい。」敵もさる者、しっかり夕飯ゲットのために 計画を練っているではないか。

 仕方がないので、テレビを見て待つことに。漫談というのだろうか、1人ずつ挑戦 者が出てきて、マイクに向かってまくし立てる。若い人ばかりではなくおじさんやお ばさんの挑戦者もいる。3分くらい話したところで突然終わり、挑戦者の顔がアップ になる。その時に会場から笑いが取れるかどうかが勝負らしい。会場の観客が、入れ た点数で勝ち負けが決まるらしい。マシンガンのような早口で、またその発話量も膨 大であるから意味など全く分からないのだが、なんだか可笑しい。そして凄まじいエ ネルギーを感じる。日本で漫才ブームが巻起こったときの上方漫才を初めて目にした 関東人の驚きにも通じるような気がした。
 しかし、シャワーを浴びて出てきた夫の「うるさいテレビだなぁ!」の一言であえ なくその番組はニュースのチャンネルに替えられてしまった。

 さて、シチリアのホテル4泊目にして初めての夕食はいかに?
「疲れているのならホテルのレストランでもいいよ。」急に気弱というか優しい夫の 言葉。でも私達の泊まっているホテルは4つ星のためにその中にあるレストランも結 構ちゃんとしたものが入っている模様。ここが夫婦の駆け引きである。
 疲れているときに食が進まない私は、ちゃんとしたレストランに入ってもたくさん 食べられなくてきっと気まずい思いをすることになるのだ。だったら、外に出て気や すい食堂にでも入ってガヤガヤしたところで適当に食べたい。でもこの気持ちを素直 に言えば、夫はきっと
『だから君と2人きりの食事はいろんなものが食べられなくてつまらないんだ。せっ かく美味しいものを食べたいのに!!!』と言うに決まっている。
「ううん。せっかくのシチリア最後の夜だもの。外に行きましょう。ホテルよりも近 所の人が集まるところの方が普段着のシチリア料理を堪能できるでしょう?」ものは 言いよう・・・出来る女まゆみ!

 「うんうん、そうだね。そうしよう。」上機嫌の夫と2人ホテルを出る。歩いて3 分くらいのところに随分賑わっているくつろいだ雰囲気のレストランがある。地元の 人が続々と入っていく。私達の店選びはほとんどまゆみ担当。その直感は滅多にはず れない。ふむふむ・・・お店の名前はア・クッカーニャ?あれ、どこかで聞いたこと がある。そうだガイドブックに載っていたわ。それで、鰯のマカロニがシチリアらし い味を出しているって?注文しなくちゃ。

 シチリアの料理は本当に魚介類と野菜が豊富で驚かされる。どこのレストランに入っ てもイカ、たこ、エビや白身魚、それに沢山の野菜がブッフェ式の前菜として所狭し と並べられている。魚介類は茹でたり揚げたりしてオリ−ブオイル・レモン・香草も しくはハーブでからめてある。野菜は薄切りにして焼いたものがドレッシングに浸さ れている。この食べ方は素材の甘さが際だって本当に美味しい。店によっては焦げす ぎのところもあるが。

 鰯のマカロニは私にはちょっと塩が強すぎたが、汗かきの夫はこれがシチリアの味 だと大満足であった。もちろんビーノ・ビアンコ・ロカーレは忘れない。
 イタリアのワインは旅をしないとよく言われる。その地方独自の料理がそれぞれに あり、それにあったワインがその土地で出来るからである。うちはワインがぶ飲み夫 婦なので、質より量、高いワインを注文しないだけであるが、イタリアを味わうとき にローカルなワインを一緒に味わうのはなかなか楽しいものだ。しばらくすると店内 でシェフ達による楽器の演奏が始まり、にぎやかさ倍増。仕事でやっていると言うよ りは好きで演奏しているようにしか見えない。
 こうして無事夕飯にありつきシチリア最後の夜が更けていったのであった。

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最終更新日: 2010/08/29