失語症記念館
南イタリアの旅

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40.ヴェニスとベネツィア

2003年 1月:

「まゆみさんが行ってきたのはヴェニスですか?それともベネツィア?」時々尋ねられる素朴な質問。これを笑ってしまうとひどく傷付けるので気をつけよう・・・と自分に言い聞かせるまゆみ。
「あい、同じ国にあります。だって、同じ町のことだもん。」つまり、ラテン読みか英語読みというような違いだ。日本をアメリカ人が『ジャパン』と呼び、ドイツ人が『ヤーパン』そしてイタリア人が『ジャポネ』と呼ぶような違いと言えば良いであろうか?
その昔、エーゲ海のクルージング中オーストラリア人に
「まゆみは次はどこに行くの?」と尋ねられ
「ローマ!」と力強く答えて全然通じなかった。どうやら英語では、『ローム』と言わなければならないらしい。
ちなみにフィレンツェとフローレンスも然り。
 ヴェネツィアに着いた翌日はメーデーだった。イタリアのメーデーは日本よりももっと盛んに祝うので、いろいろなところで風船を持った人たちがデモをしていたりする。お店も殆どが休業になると言うが、さすが観光都市ヴェネツィア、ここはメーデーに関係なく人も多くお店も開いていた。
 さてヴェネツィアに来たらまずサンマルコ広場に行かねばならない。世界で一番豪華で美しいと言われる広場だ。大理石作りのサロンという言葉が本当にぴったりだ。サンマルコ寺院、ドゥカーレ宮殿等いつ見てもため息が出る美しさ、豪華さ、そしてその大きさ・・・ヴェネツィア共和国時代の計り知れない富と権力を今も象徴している。総大理石のそれらの建物には夥しい数の彫刻や絵画が装飾されている。そして又夥しい数の鳩がそこに巣を作り糞をばらまいてもいる。ここで豆を持ったおじさんに手に豆を渡されてしまったらおしまい。あっという間に鳩がそこら中から飛んできて「写真、写真!」でチップ要求と言うことに。
 エジプトから運ばれてきた聖人サンマルコを祀ったというサンマルコ寺院。この寺院一つ取ったってとても見きれないほどの芸術とパワーをひめている。オペラグラスを持ってオフシーズンにゆっくりとじっくりと歩きたい。
 さて私のヴェネツィアで好きなもの・・・それは時報を告げる鐘の音。町中の鐘突堂の鐘が一斉に鳴り出すのだ。あちこちから響いてくる鐘の音。カラーンコローンガラーンゴーン・・・その鐘の音の重なりの素晴らしさ。何度聞いても心が震える。以前ここへ来て初めてホテルの小部屋でこの鐘の音を聞いたとき、余りにも感動したまゆみは、日本にいる夫にも聞かせたいと2度も電話にチャレンジした・・・が、トイレに入っているとか、今の今までそこにいたのに・・・という第3者の返事ばかりがむなしく返ってきた。人の気も知らないでトイレなんか入って・・・。と言うわけで今回やっとまゆみが感動に心を震わしたあの鐘の音を聞かせてあげることができるのだ。
 広場に来たら次は高いところに登ろう。町全体の感じがつかめる。ここは水に浮かぶ都だから、他の町とはちょっと景観が違うかも。特にイタリアの場合、町によって屋根や鐘突堂の色や形に違いがあって面白い。
 早速鐘楼に。結構並んでいる。並んで待っている途中で横から割り込もうとした人がいたがあっけなくみんなに阻止されてすごすごと後ろの方に吸収されていった。やっと来たエレベーターはぎゅうぎゅう詰めである。エレベーターで上がるにつれて少しずつ鐘の音が大きくなってきた。私達が到着した時ちょうどお昼を告げる鐘が鳴っている真っ最中だったのだ。頭上で機械仕掛けの大きな鐘がゴーンゴーン鳴っている。鼓膜がたまったものではない。みんな耳を塞いでいた。
「これが鐘の音だよー!すごいでしょう?」
「ええーっ?何だってぇ?全然聞こえないよう!」
鐘がやっと鳴り終わった時には耳がガンガンしていてしばらく眩暈がした。鐘の音は少し離れて聞くのがよい。
 鐘楼から見る風景は歩いている時に見る町とは全く異なり、家々の屋根は全てオレンジがかったレンガ色で何だか不思議な風景であった。
 鐘楼に昇るための行列がさっきの何倍にもふくれあがっていた。サンマルコ寺院もドゥカーレ宮殿も長蛇の列である。広場にはうじゃうじゃ人が湧いている。しばしの間、鐘楼の上でヴェネツィアの町を堪能することに。
 でも空腹にはすぐに白旗。広場に降りると本当にすごい人なので、鞄をしっかりと両手で押さえながらレストラン探し。裏道に行けば行くほど値段が安くなるし味もよろしい。
「さぁ、午後は美術館巡りをするぞう。」
「私は買い物に行く。お土産買ってないし。」
「それではさようなら」別行動となるいつものパターンであった。

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最終更新日: 2003/01/16