失語症記念館
南イタリアの旅

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42.ヴェネツィアのお土産

2003年 4月:

 ヴェネツィアンガラスもヴェネツィアのお土産で有名だ。これはすぐ近くのムラーノと言う島にガラス工場がある。だから本物のヴェネツィアンガラスの作品にはmuranoと言う銘が入っている。
 ヴェネツィアのホテルの部屋には『ヴェネツィアンガラスの島へガイド付き無料ご招待。希望の方はフロントまで!』なんて日本語で書いてあるパンフレットが置いてある。ムラーノまで連れて行って向こうで粗悪かつ高価な花瓶などを買わせるのである。ただほど高いものはないと言うのは本当である。日本人はどうしても親切にされると「ノー」と言えない質の人が多いのでカモにされやすい。ムラーノまではヴァボレットと言う水上バスに乗ってすぐだし、たいした値段でもなく沢山便もあるので、個人で行ってゆっくり好きなように見て歩くのが良い。
 なぜ、島に工場を作ったのか。ヴェネツィアンガラスは、ルネッサンスの時代ヴェネツィア共和国の経済を支えていた重要なものだったので、ガラス職人達が他へ流れないように島に幽閉していたという。
 時間があれば、幾つかの店を見て歩いて相場を勉強しておくに限る。じゃないと高いのか安いのか皆目見当がつかないし、偽物を掴まされる事も少なくない。お土産に配る女の子向けのブレスレットなども手作りの店に行って沢山買うから安くして欲しいと言えば結構値切ることが出来る。たいがい現金ならクレジットカードよりも値引率が良い。私も小さな工房でガラスのブレスレットを20本ばかり買ったが、次の年ニースのアクセサリーの店で同じものに倍の値段が付いていたのを見て何だかとても嬉しかったのを覚えている。やっぱり現地が一番安い。
 さて、結構知られていないのがヴェネツィアのプリーツ布の製品である。袋とかスカーフ、マフラーなどいろいろとあるが、値段が高い。絹で出来ているそれらは素晴らしい光沢で又色も様々・・・本当に美しい。価値の分かる人へのお土産としてはおすすめである。お土産を待ちわびる母にスカーフを買ってみたものの似合うかどうか不安がよぎる。スカーフって一つ間違えると田舎っぽくなってしまうものなのよね。しかもプリーツときている。そして又、その価値を認めるだけの見識が彼女にあるかも定かでない。・・・定価をつけたまま渡そうか。いや彼女がリラを円に換算することが出来るとは思えない・・・不安は増すばかり。まぁ、いいでしょう!記念ですから・・・と自分に言い聞かせるまゆみ。こうやって旅の無駄金がバラバラと落ちていく・・・。
 ヴェネツィアの水路の水は決して綺麗ではなく、場所によってはどぶの臭いさえする。夏などは結構臭いがきついので、水路の脇のレストランでの食事などはテレビで見ていると素敵だが、実際には素敵からほど遠い。されど水の都ヴェネツィア!水に浮かぶその都はどこから見ても、朝に夕に晩にとても美しい。ということはいたるところでスケッチをしている売れない画家を見かける。 
 売れない画家達の絵は安い。そして値切りにも快く応じてくれる。中にはこれから売れると良いなぁと思えるなかなかの男前の画家もいる。もちろん絵も上手な人が沢山いるわけだが・・・。画廊に行かなくても道ばたで描いている彼らと交渉しながら、気に入った場所や時間や色合いを吟味しながら、旅の思い出に絵を買うのも悪くない。
 まゆみ、友達の結婚祝いの絵をここヴェネツィアで購入。夕暮れの水上に浮かぶ元貴族の屋敷が描かれたこの絵は友人の玄関を飾ることとなった。
 細い道の両側に連なる店のウインドウを眺めながらぶらぶら行くと文具店があった。入ってみると紋章入りやイニシャル入り、それに注文すれば名入りが出来る封筒や便箋、封をするときに使う色とりどりの蝋とそこに押す印章などが並んでいる。印章の取っ手がヴェネツィアンガラスというのも魅力だ。とっておきのお手紙には蝋で封をして、まゆみのイニシャル”M・Y”の飾り文字マークをつけるのだ。何だか貴族の令嬢になった気がしてきた。よし、ここで一式揃えましょう。・・・ふぅ、歩けば歩くほど、荷物が増えていく。買い物はこのくらいにして、さぁ、ホテルへ帰ろう。夫はもう戻っているかしら。
 旅の思い出は人それぞれだ。つまらないちっぽけなブローチだって愛する人に買ってもらえば、ダイヤより輝いて見える・・・かな?他の人にとって価値のないものでもその人にとっては一生忘れられないものだってある。私も必ず、旅の途中で気に入ったものを一つ買うことにしている。それを見ればその時の旅が鮮やかに甦ってくる。
 私の今回のヴェネツィアの記念品は蝋と印章付の手紙のセットとなった。さて、誰に出そうか。帰国後の楽しみが出来た。

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最終更新日: 2003/04/22