疑問1.「どうして失語症には1級や2級がないのでしょうか。」の回答:
身体障害者福祉法の障害認定において、失語症は音声・言語機能の喪失で3級、著しい障害で4級にしか認定されない現状については、私共もその生活の困難さに比べ判定が低すぎると思っています。これまで連合会の歴代理事長の方々も厚生労働省に働きかけを行ってこられたと聞いています。どのような働きかけをし、それに対して厚生労働省がどのように答えてきたか、ということは連合会にお問い合わせ下さい。
「どうして」という問いには、厚労省に答えてもらうしかありませんが、失語症は、視覚障害や聴覚障害という感覚器官の障害に比べ、脳の中で起こっている障害なので複雑で分かりにくいということは言えるでしょう。視力や聴力の判定のように、客観的な分かりやすい指標で表すのは、失語症の場合にはむずかしいかと思いますが、厚労省がその気になれば、指標はできるはずです。
失語症の人が抱える問題や生活上の困難について、厚労省の役人をはじめとして、あまり一般に知られていないことも問題の一因だと思います。
なお、「失語症関係の等級の認定されている方は稀なようです」と書かれていますが、その根拠は何でしょうか? 昨年発表されたCANの調査では、身体障害者手帳を取得した失語症の人で、言語障害の認定を受けている人は約3割ということでした。
しかし逆に言えば3割の方しか言語の認定を受けていない、ということになります。私の経験では、肢体不自由で1級や2級が取れていれば、わざわざ言語障害の認定を取らなくても、実際のサービスに変わりが無いと言われて取らなかった、という方が何人もいました。認定されるためには、都道府県の指定する医師に診断書・意見書を書いてもらう必要があります。通院している病院に指定医がいなければ、わざわざ指定医のいる病院に出向いて診断書を書いてもらわなければならず、文書料などの費用もかかります。そのために、肢体不自由のみで手帳を取得できればそれでよいという話になる場合も多いと思われます。
医療機関での言語訓練を終了した失語症の人が受けられるサービスには、介護保険制度と障害者福祉の制度(障害者自立支援法)によるサービスがあります。厚労省の方針で介護保険が優先するので、介護保険が利用できない場合に障害者福祉の制度を利用することになります。
失語症と診断されたら、介護保険の被保険者でない場合*や、介護保険に無いサービスを利用したい場合には、たとえ低い等級であっても、手帳を取得するようお勧めします。手帳を取得しないと、障害者自立支援法のサービスを受けられません。また、厚生労働省などの公的機関が実施している統計上の障害者の数は、この手帳の取得者の数で調べられることが多いので、同じ等級でも「言語障害」で手帳を取得する人が少しでも多い方が、戦略上は有利だと思われます。
*40歳未満の人、65歳未満の人で失語症になった原因が脳卒中など認められた疾患以外の人
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