失語症記念館

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コミュニケーション・アシスト・ネットワーク(CAN)

 

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2008年01月23日:コミュニケーション・アシスト・ネットワーク(CAN)

全国失語症電子メールの会
 有志の皆様

                       NPO法人コミュニケーション・アシスト・ネットワーク
                                    代表理事  山本 正志

 前略、失語症についての疑問を頂いてから日にちがたってしまったことを、まずお詫びいたします。遅くなりましたが、お返事を差し上げます。
 私たちコミュニケーション・アシスト・ネットワーク(CAN)は、一昨年「言語障害と身障手帳」の全国調査を行いました。その結果は全国失語症友の会連合会総会で報告しました。また「言葉の海」2008年新年号に、掲載していただきました。私たちの考えはその調査や結果のまとめ方に反映しているので、そちらも参照していただければ幸いです。
疑問1.「どうして失語症には1級や2級がないのか?」の回答:

 分かりません。身障手帳の体系は厚生労働省が作っているので、厚生労働省に直接問い合わせるのが一番早道だと思われます。
  推測として、以下の様に言われることがあります。「身体障害者手帳における言語障害は最初、身体障害である喉頭摘出や口蓋裂による言語障害を想定していた。脊髄損傷とか下肢切断に比べ身体障害としては比較的軽度だと見なされ3級、4級となった。最初、失語症は想定外だった。その後失語症者への支援の必要性が言われるようになり、「言語障害」の解釈を広げて失語症を含めるようになった。しかしその時、言語障害としての質の違いは全く考慮されず、3級・4級のまま残った。むしろそれまで失語症は全く福祉の対象外だったので、それで一歩前進と見なされた」以上です。ただしこれはあくまで、いろいろ言われている推測を山本がまとめたものです。正確なところはやはり、厚生労働省に問い合わせてください。
疑問2.「外部から見えない障害はどうなるのか?」の回答:
疑問3.「法律に失語症という用語が使用されていない。」の回答:

 [外部から見える/見えない]という分け方は、適当とは言えません。身体障害者手帳の対象には、外部から見えない内部障害も含まれます。じん臓機能障害(人工透析患者)やHIVウイルスによる免疫機能障害(エイズ患者など)の障害があります。これらは身障手帳ができた当初からの対象ではなく、比較的新しく組み込まれたものと思われます。

  また身障手帳では、疾患名では認定していません。○○機能障害という形で認定されています。上記のじん臓機能障害や免疫機能障害などでもそうです。だから失語症が「音声機能、言語障害またはそしょく機能の障害」となっているのは、特別なことではありません。

  日本の福祉では、障害を3種類に分類しています。身体障害のほか、知的障害と精神障害です。身体障害は身障手帳、知的障害は療育手帳、精神障害は精神保健福祉手帳で認定されます。しかしこの3種の障害手帳は、それぞれの障害を狭く認定するようにできていました。結果的にその境界に位置する障害は、認定から漏れていました。漏れていたのは、軽度発達障害や高次脳機能障害です。近年ようやく、軽度発達障害は療育手帳で認定できるようになり、高次脳機能障害は精神保健福祉手帳で認定できるようになりました。

  失語症自体は医学的に言えば高次脳機能障害の1つです。CANの「言語障害と身障手帳」調査でも、失語症で精神保健福祉手帳を取ったという回答が数人からありました。失語症では身体障害者手帳と精神保健福祉手帳のどちらか、または両方取れるというのが現状です。

  医学的には以上の通りですが、では失語症なら精神保健福祉手帳を取る方がいいかと言えば、現状では必ずしもそうではありません。精神保健福祉手帳は主に統合失調症を対象とした福祉体系を作ってきたので、高次脳機能障害の人に使いやすいとはまだ言えません。問題が残っています。
 手帳制度は税の減免とか、各種料金の減額に影響します。今後失語症者がもっと利用しやすいように、声を上げていく必要があると考えます。
  それと同時に考えていくべきなのは介護保険と、自立支援給付です。現在の介護認定審査では言語障害に関する項目はとても少ないので、失語症を適切に評価しているとは言えません。また障害自立支援認定にしても、同じ状況です。そして介護の現場や福祉の現場で、失語症に対する理解が進んでいるとは言えません。大きな問題が残っています。
  これらに対して、障害のある人本人が社会に向けて発言していくことが大切です。自分たちが必要なことを、具体的に訴えることが出発点になるでしょう。私たちCANは一緒に発言していきたいと考えています。

 今後ともよろしくお願いします。

草々

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