Copyright (c) 2002 by author,Allrights reserved
46.ミラノへ向かって |
2004年 8月: |
ヴェネツィアに4泊したというのに、とうとう洗濯物は来なかった。ソレントで出したクリーニングが間に合わず、ホテルに送ってくれることになっていたけど・・・イタリアだものなぁ。
ホテルの小さなバーの片隅で、ヴェネツィア最後の夜を楽しむ。明日は10時発のユーロスターに乗ってこの旅最後の都ミラノだ。スーツケースに残っていたカップヌードルもやっつけたし、あとは明日いらないものを処分すれば大分荷物も減るだろう。夫は、又してもコマネズミのようにせっせと荷物の整理をしている。まゆみはその様子を横目で見ながら、・・・ベッドにすっぽりと入ってしまった。
5時45分起床!だって何にも準備してないのだもの。コンタクトを入れシャワーを浴び身繕いをし、荷物をスーツケースに入れる。日本から履いてきた革靴もスニーカーもつっかけサンダルも全て捨てる。あとはミラノで新調すればいいのだぁ。
朝食を取り、8時にチェックアウト。ゴロゴロとスーツケースを引いて5日前に歩いた船着き場からホテルまでの道を逆戻り。さようなら、ヴェネツィア!
昨日のうちに買っておいた24時間乗車券で乗船出来たが、荷物用のチケット売り場がわからず、本当は荷物代を払わなければいけないのに、ちゃっかりと払わずにそのまま下船・・・ちょっぴりラッキー!
ヴァボレットはゆっくりゆっくりと運河を進んでいく。昔は夜ごとに舞踏会や夜会が開かれてきらびやかだったろう貴族の大分朽ち果てている館の数々を眺めながら、なんとなくこの場所に自分がいることに眩暈に似た感覚を持った。
観光客はこのような思いをそれぞれに持っているのだろうけれど、本日は平日の金曜日なので、ヴァボレットの中はスーツ姿のビジネスマンや仕事に向かう人たちでごった返し。ヴェネツィアは昔と今がごちゃ混ぜの町でもある。
9時に駅に着いたので、今回は少し余裕だ。水を買ったり、日本の自宅や実家へ電話を入れたりした。電話代は、得てしてホテルからは高いので、ヨーロッパは公衆電話を使うに限る。
ユーロスターでヴェネツィアーミラノ間は2時間55分。今回は、無事何事もなく1等車に着席出来た。ゆっくりとノートを広げ、数日分の記録を車内で書いた。眼下には一面のブドウ畑が広がっている。ヴェローナの近くなのでソアベの産地だ。日本でもソアベクラシコはよく飲むけれど・・・ここのブドウが私達の所までやってくるのだ。元気に育ってたくさん来てねぇ。変な激励をブドウに送るまゆみであった。
さて電車の中でのまゆみは忙しいのだ。残された時間でミラノの勉強をしなくては。
「何で今頃勉強しているのかね。こうやって風景を見る。それが旅の醍醐味ってもんじゃないか。」
「フムフム、ミラノ中央駅のステンドガラスは大変美しいそうだよ。じっくりと見てみたいね。」
「ダメダメ、中央駅は危ないんだよ。君のようにボーっとしているとあっという間にどこかへ連れていかれて丸裸にされちゃうぞ。」
「でもちょっと見てみたいじゃない?」
「ダメだよ、荷物持ってうろちょろしてられないよ。すぐにゲートを出たらタクシーに乗ってホテルへ直行だよ。良いね、絶対ボクから離れるなよ。」
「はいはい、わかりました。」
スカラ座かぁ。これは絶対行かないと。へぇぇ、ミラノって美術館や博物館が多いんだねぇ。あら、私の泊まるホテルは、ドォーモのすぐそばなのかぁ。
「ボクは悲しいよ。君は今頃自分の泊まるホテルの場所をチェックしているのだものなぁ。」・・・大きなお世話である。ああ、うるさい男・・・それは私の夫なり。
<br>確かにミラノ中央駅の治安は悪いらしい。治安と言っても南イタリアのそれとはちょっと質が違うような気がする。
さぁ、いよいよミラノに到着だぁ。何て大きな駅だろう。何て人が多いのだろう。見るからに怪しい人もたくさんたむろしている。あれは、ロマ(ジプシーの意)だな!
「まゆ!まゆ!もたもたしてないで早く来なさい。急いで急いで!キョロキョロしないで。早く早く!」
「はいはい・・・(ああ・・・うるさいなぁ)」2人はわき目もふらず、いや、まゆみは時々わき目をたっぷりとふりながら・・・脱兎の如くトランクを押しながら、正面口へと向かった。
タクシーに乗り込み、ホテル名を告げ、大きく息を吐いたのであった。
|
|
|
設営者:後藤卓也
設定期間:2001年3月15日〜2001年12月31日
管理:記念館
Copyright © 2001 author. All rights reserved.
最終更新日: 2004/08/13