失語症記念館
素敵な人々

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きっかけ

後藤 卓也空白
横浜市在住空白

2001年 8月:

キューって、知っています?
ア、そう。 知っています!
そりゃぁ、TVや映画、演劇でディレクターがキューと云っていたら、子供でも覚えますヨ、ネ。
私が失語症になってから3年位の頃、すずめの会の滑り出しのとき、今から約15年位前になりますが、ST佐野洋子さん(江戸川病院)から講演をしていただきました。それは「モチベーションとキュー」という内容でした。
キュー(Cue)とは、私は「玉突き棒」のことと思っていましたら、台詞の最後の言葉で、それが次ぎの役者の合図になる「せりふのきっかけ」で、会話の時や人生の出会いのきっかけをつくるという意味でした。
モチベーション(動機づけ、やる気)とキュー(きっかけ)の大切さを学んだものでした。


先日、亀戸でST鈴木 勉さん(都立墨東病院)が行なった会で、車イスの女性とそのご家族が講演をされました。
6年前に全失語が発症、現在「ありがとう」と可愛らしい声で挨拶するようになっていました。
隣の娘さんの話を楽しそうに肯いています。
全失語での状態から立ち上がったのは、2年位前の末の娘さん(講演者の隣で話をしている娘さんとは別)の結婚話だったとか。
結婚話の進行にあわせてリハビリや結婚の買物に積極的に参加するようになったと云う話です。


病気の前は、銀座に買物などとか、あちらこちらの音楽会などに行っていたそうです。
ある日、「おかぁさんは音楽会が好きだったよネ」と音楽会に引っ張り出したのです。
おかぁさんはよろこんで会場にいきましたら、問題がありました。
用意した席は特別シートで、そこに行くのには、階段を約50段も上(のぼ)っていかなければならないのです。
エレベータやエスカレータはなく、自分で階段を上(のぼ)らなければなりません。
階段の上り下りは5段位の現状ですから、周囲の人々は諦めようかと思うのでしたが、おかぁさんはこの階段を上(のぼ)ると云うのでした。

おかぁさんは、てすりにつかまりながら必死に登ったと云うのです。
人間、意志を持つと山を動かすといわれるように、やる気になれば普段昇らない階段を登ったのですネ!!
彼女は最後まで鑑賞して非常に満足し感動して帰ったということでした。
この話を聞いて、会場の人達も私も感動しました。
末の娘の結婚話がきっかけとなり、趣味など自分の関心事に引かれていったこの女性は、もう新しい人生に踏み出しているのです。


50段ということは約3階を昇ることになるので、話半分としても、「きっかけ」を取り込むことが出来るとこんなに回復するのだと云う例に違いない・・・。

私の場合は暇があったから、やることがなかったから、病気以前に定年になったらパソコンでゲームでも作りたいと思っていたから、それから技術を身に付けなければというひらめきから、おもちゃだったパソコンを始めたのでした。
それが、社会復帰に役立ち、現在ホームページにも利用できるのは面白いものである。
チャンスはころがっているらしい。


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最終更新日: 2009/09/10