失語症記念館
失語症と制度  

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2007年09月13日:言語聴覚士 小薗 真知子

熊本のST小薗です。
「失語症は、障害ですか?」という問いそのものに驚きましたが、これを問題として取り上げなければならないことが、失語症というもののたいへんさを象徴していますね。
でも、当事者の皆さんは、失語症について納得いくご説明を受けられ、第3者に分かりやすく伝える方法をお持ちでしょうか?  (必ずしも、自分の口で説明するということではなく、相手に読んでもらう資料なりを持っておられるかも含めてです)

また、失語症と構音障害と認知症の定義の違いをご存知でしょうか?
失語症を伝える方法を持っていないことには、不当な扱いを受けたときに理解させるチャンスを逃し、悔しい思いだけが残るのではないかと思います。 (失語症を一般の方に分かってもらう目的で、拙書「失語症―そして笑顔の明日へ」を出しています。何かの形でお役にたてると本望です)

失語症が、世の中の人々に理解してもらいにくいのには、いろいろな理由があると思います。
1、障害が言葉という、発すると消えてしまう掴みどころのないものにあるということ。
2、障害について世間に訴える「道具」である言葉に障害があるということ。
3、失語症を始めとして、「高次脳機能障害」などの用語が難しく、医療従事者にさえ十分理解されていないということ。

失語症は高次脳機能障害の一つですが、高次脳機能障害には、広義の定義と狭義の定義があります。
*広義では、脳に損傷が起こったために、何らかの認知機能の障害(失語、失認、失行、注意障害、記憶障害、遂行機能障害など)が引き起こされた状態をいいます。
*狭義では、交通事故やその他の脳損傷の後、外見上は障害がないように回復したにもかかわらず、注意や記憶の障害のために、以前のような仕事や活動ができず社会復帰できない、比較的年齢の若い方々をさしています。

制度の中で言語機能障害に関係あるものとして、介護保険の認定項目の認知機能の指標である「認知度」があります。
□正常
□T  何らかの認知機能低下はあるがADL自立。
□Ua 買い物や金銭管理などミスがある。
□Ub 電話の返答や訪問者との応対などができない。
□Va 日中を中心にADLに支障をきたす。徘徊、不潔行為などあり。
□Vb 夜間を中心に上記症状。
□W  昼夜ともに症状あり
□M  著しい精神症状。専門的治療が必要。

身体障害のない失語症の方が介護保険で何らかの支援を得ようとする場合、この項目でチェックしてもらうしか、介護保険の支援を得る方法はないと思います。
身体障害者手帳の言語評価の項目でも、元々は聴覚障害の方の評価を基準にされていて、聴こえるか、聴こえないか、声が出るか、出ないかという単純な評価図式になっていました。

最近、高次脳機能障害者の社会的支援に国がやっと動き出していますが、これも若い患者さんの親御さんたちが厚労省に働きかけた結果だと聞いています。
失語症の方々の場合、その不自由さを伝え難いというたいへんさがありますが、当事者が周りの人に訴えていかないことには、この状況は変わらないと思います。


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