Copyright (c) 2002 by author,Allrights reserved
19.フェリーに乗るまで(午前中) |
2002年 6月: |
4月25日水曜日快晴。とうとうシチリア最後の朝を迎えた私達。本日はイタリア
の解放記念日でこの国の祭日である。ということはお店などはほとんど休み。私達の
ナポリ行きフェリー乗船時間は18時からなので、1日観光の時間が残されている。
ある意味有意義というかもしれないが休む間もなく・・・である。
せっせとトランクに荷物を詰め込み、朝食を取ってホテルをチェックアウト。最初
の観光に選んだのはパレルモから、8キロくらい行ったところにあるモンレアーレ。
標高310メートルのカプート山頂にある町である。パレルモ駅からバスも出てい
るが、午後美術館に行きたいと思っていたので、効率よく回ろうとタクシーで行くこ
とにした。狭い坂道がくねくねと続く。山側には家が所狭しと並んでいて、その反対
側は崖である。なぜラテン系の人たちはこういう道をこんなに飛ばすのか?落ちたら
たぶん助からないと確信できるような崖が続く。飛んで火にいる夏の虫・・・そんな
言葉が頭をよぎる。ハンドル握るとアクセル踏まずにいられないのだ。これも遺伝子
のなせる技か? |
|
モンレアーレのキオストロ |
|
モンレアーレ 教会前の広場にて |
|
冷や汗がじっとりとした頃、教会の前の広場のようなところに着いた。なにやらお
祭りというか祭日に開かれる市場のような感じか。沢山の屋台や露店、そして羽やボ
ンボンやリボンなどを体中に飾られたロバなどがそこら中にひしめいていて楽しそう
だ。箱を前に置いて見たこともないような楽器を吹いてはお金を投げてもらっている
人も少なくない。だからいろんな音、色、臭い、物そして人がごちゃ混ぜ状態。明る
い太陽の下、みんなが楽しそうで生き生きして見える。
上を見上げるとイスラムの丸いドームやビザンチン様式と思える教会のモザイクが
びっしりと敷き詰められた外壁、昔のフランスを彷彿させるようなロマネスクの影響
色濃い建物が一緒に視野に入ってくる。ああ、やっぱりここは地中海の十字路なんだ
なあと体感。ちょっと歩けば17世紀に作られたというマヨルカ焼きの壁画がでーん
と通りに面してお目見えする。町中が美術館だ。
さてここの見所はなんて言ってもドゥーモとキオストロ。ガイドブックにそう書い
てある。ドゥーモの中に入って圧倒されるのはモザイクで描かれた全能の神キリスト。
祭壇正面の天井というかドームに描かれているそのキリスト。表情もとても良い。
金色がまたシックで厳かさを感じさせる。キリストの周りを飾る聖人達やモザイク模
様・・・そのスケールの大きさと見事さ、その仕事の緻密さにただただ息を呑むばか
り。あんな高いところへ、あんなものを描くなんて、しかもモザイクでしょう?美術
芸術のレベルもさることながら、すごい労力!
こういう場面でいつも私は宗教が持つ想像しがたいほどのパワーを感じるが、宗教
のパワーというものは一体どこから来ているのだろうか。何かにすがりたいとか、自
分を誇示したいというような人間の心の弱さに通じているのだろうか。それにしても
凄まじいエネルギーだ。
モンレアーレから見える山肌はどこかギリシャのそれに似ている。はげた岩山に少
しずつ草が生えてきて、ぽつりぽつりとオリーブの木が点在している感じ。オリーブ
の葉っぱはどこかしら白ちゃけた緑色で余り綺麗でなく、豊饒さが感じられず淋しい
感じがするのは私だけだろうか。でもオリーブは美味しい。オリーブは沢山の豊饒を
もたらしてくれるというのに、こんな感想でオリーブさん、ごめんなさい。
それでは回廊付中庭、キオストロへ。ここのキオストロは柱がこれまた綺麗なモザ
イク仕立て。赤や黒の石と組み合わせて金もふんだんに使っている。大分はがれ落ち
ているが、その時代はさぞかしきらびやかで美しく輝いていたことであろう。そして
この中庭にはなぜか猫がたくさんいた。時間の止まったキオストロの中でのんびりと
昼寝をしている猫たち。この中庭にいた猫たちのほとんどがトラなんかの和猫そっく
りで可笑しかった。でも鳴き声は「ボンジョルニャー」・・・ウソです。(^^)
外に出るとやっぱり羊くらいの大型犬野良がのそりのそりと歩いている。南イタリ
アのお爺さんを思わせる風情がある。タイの野良犬の大部分はかびが生えていて脱毛
してたりするので、悲しいが、ここのは人間とうまく共存している。なんて言っても
太っているのがほほえましい。
モンレアーレの町は本当に小さいのでもう観光は終わり。だってお昼だもの。ご飯
を食べにパレルモへ帰ろう。午後からは美術館に行く予定。行きたいところが2人と
も違うので別行動?
さぁ、タクシー乗り場へ直行だ。
|
|
|
設営者:後藤卓也
設定期間:2001年3月15日〜2001年12月31日
管理:記念館
Copyright © 2001 author. All rights reserved.
最終更新日: 2010/08/29