失語症記念館
南イタリアの旅

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20.フェリーに乗るまで(午後)

2002年 6月:

 タクシーを降りたのは、マッシモ劇場の前。シチリア初日に観光したところだ。こ こは解放記念日と言っても観光客の集まるところなので開場していた。私達は劇場横 のピッザーラ59へ。イタリア版ファミリーレストランという感じかな。
 「ピッザーラと言うからにはピザを食べなくちゃ。」と夫はピザを、私はペンネ・ アラビアータを注文。ペンネというのはペン先のような形をしたマカロニみたいな物 でアラビアータというのはトマトソースに唐辛子が入っている。ホットなパスタであ る。ワインのおつまみとしては、アラビアータはなかなかである。スパゲティと違っ て時間がたってもふやけにくい。つまり長時間アルデンテ。ここのアラビアータは美 味しかった。

 しかしスパゲティをアルデンテで出すのはイタリアくらいで、フランスもドイツも ソフト麺になっている。アメリカもしかり。私はイタリア料理が好きだ。だから時に スパゲティも打つ。と言うわけでちょっとうるさい。でも何回も裏切られていると自 分でも傷つかない方法というものが見つかってくるものだ。

 私達が、ワインを飲みながら食事をしているとどんどん団体客が入ってくる。どこ に行ってもドイツ人が多いのはそういう時期なのだろうか。それともイタリアに来る ドイツ人が群を抜いて多いのだろうか?

 さてぐずぐずしてはいられない。美術館目指して午後の観光開始だ。
 ところが、彼が1番楽しみにしていたシチリア州立考古学博物館閉館。ガイドブッ クには無休と書いてあったのに。解放記念日は特別なのだろうか?いやいやよく見る と普段は午前中だけしか開いてないらしい。本日水曜日は午後3時から6時45分ま で開館と書いてあった。つまりお昼休み。博物館のお昼休みはツーリストにとっては 難儀な物だ。と言うわけで私が行きたいと思っていたシチリア州立美術館へ。
 この美術館はアバテッリス宮殿という15世紀に建造された瀟洒な建物である。絵 画も彫刻もなかなかの逸品ぞろいである。特に「アラゴン家のエレオノーラの胸像」 は大理石の白さにその女性の優美さが重なりとても美しい。ガイドブックに必ず載っ ている「死の勝利」や「受胎告知のマリア?もじっくりと見ることが出来た。あまり 見学者がいないので、本当に静かに、ゆっくりと見て回れる。この美術館の質の高さ には、うるさい夫もとても喜んでいた。

 美術館を出るとまだ時間がある。でもまた州立博物館に戻って見て回るほどの時間 はないし元気もない。さてどうするか。
「兄弟ホテルに行ってみない?」「えっ?」
私達が泊まったホテルには、5つ星ランクがついた兄弟ホテルがあるという。その名 もグランドホテル・ビラ・イシュア。1908年に造られたその建物はノルマン様式 とアール・ヌーボーを融合させたものらしい。
「そこのバーで1杯やろう」
「いいね、いいね!大賛成!」何に釣られたのか・・・答えは明白。
タクシーで行ったそのホテルは・・・まゆみも絶句!大広間は全部ミーシャの世界。
あああ・・・アール・ヌーボーーーーーーって感じ。壁も柱もシャンデリアも・・・ 全部ミーシャ。見るからにお金がかかっていそう。そして泊まったらお金がぶっ飛び そう!・・・でも夢の世界のようだった。綺麗・・・と言う言葉しか浮かんでこない。
シーズンオフなのか、時間帯なのか、普段もこんなものなのか、客の姿は見えず、静 寂が広がっている。

 バーからは海が見えた。座ったソファーもゴージャス。まゆみカンパリソーダを注 文。マホガニーと大理石・・・そしてミーシャ。豪華な部屋でシチリアの海を眺めな がら、カンパリソーダを飲む私。今だけはお姫様。
「もうそろそろ時間だね。ぽーっとしてないで早く飲みなさい。さぁ、タクシーを頼 んでホテルに戻って荷物乗っけてそのまま埠頭へ行こう。」
「あい」現実社会にあっという間に引き戻されてしまった。
「ゴキュゴキュゴキュ」・・・お姫様はカンパリソーダをこんな風には・・・きっと・ ・・飲まない。ふーーーーっ。

 いよいよナポリへ行くのね。「ナポリを見てから死ね」という言葉がある魅惑的な 町。でも「ナポリを見たら死ぬ」と言う裏返しの言葉も聞いたことがある。世界有数 の治安の悪い町ナポリ。
この人はさて、頼りになるのだろうか。いやいや人を頼りにするのはやめておこう。
明日はテニスシューズを履こう。すぐに逃げられるようにね。荷物も身軽にして。左 手には、成田で買ったミッキーマウスの腕時計。これなら取られても惜しくない。緊 張感はずっと続いているけれど、これからのことを考えると新たな緊張感が重なって くる感じ。さぁ、タクシーに乗っていざ、シュッパーツ!

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