失語症記念館
南イタリアの旅

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3.昼食にありつく前に

2002年 3月:

 パレルモ国鉄駅に向かってひたすら歩く。これから始まるイタリアの旅の鉄道の予約のために。歩いている途中で雨が降り出した。それでなくても寒いのに・・・。
やっと着いたと思ったら窓口付近には、目つきも服装も良くない人たちがそこここに たむろしている。そして駅の窓口業務は最悪。接客をしているのはおばさんが一人。
 英語はもちろん通じないし、手際の悪いことといったら言語同断、加えて愛想の悪いこと。わからないといちいち他の人を呼ぶ。聞かれて答えている人がなぜやらないのか、あんたがやれば早

フランチェスコのレストラン

フランチェスコのレストラン
右がフランチェスコ
手があくと楽器の演奏
いのに・・・。パソコンも古ければ、キーボードも人差し指しか使ってないじゃないの。きちんとイタリア語で切符を2枚ちょうだいね、その他必要なことは全て書いておいたのに・・・。これが後々の大きなトレブルとなるのである。せめてソレントで指定を取れば良かったと悔やまれる。今でも老眼鏡越しにこっちを睨む愛想の悪いあのおばさんの顔を思い出す。
 目的地や乗車駅を何回も訂正し、やっと切符をゲット。さすがの元気印もたいそう疲れ果てたのであった。イタリアは労働組合が強いと言うけれど失業者の中にはあのおばさんよりずっと優れた人が必ずいるはずだ。効率をもう少し考えて欲しい。

 でもでも気分を入れ替えて、さあ観光に行こう!
 しかし・・・時計を見るともうすぐお昼。さて、今日は今回のイタリア旅行、それもシチリア初めての昼食だ!気合いを入れて考えよう!さてさてどこで何を食べようか?
 寒いし、疲れたしもう歩きたくない。スケジュールから考えて、フランチェスコのお店に行くのは今日しか無いという私の意見が通りタクシーに乗って、いざフランチェスコの店へということになった。彼の店はシチリアでも結構有名らしくタクシーの運転手に店の名前を告げると即座に頷いた。
 しかし、しかしである。郊外とは聞いていたが遠いのだ。駅から乗って程なく住宅地を抜けたかと思えば道は狭いし走っている車もほとんどいない。だんだん寂れた道になってきて不安がもやもやとわき出したころ、たぶん30分くらい走っただろうか・・・海辺の寂れた漁師町に着いた。料金は70000リラ。それなのに運転手は「150000リラ払え。」と言う。片道日本円で4千円くらいかかっている。それを倍払えというのだ。・・・ぼられているのか?
「ここは町からすごく離れている。私は又町まで帰らなければならないので、その分払ってもらわなければ・・・。」わかるような・・・わからないような運転手の言い分である。
「僕はここのレストランのオーナーと友達だから、君の言い分が正しいかどうか、彼に聞いてきても良いか?」
運転手は首をすくめながら「どうぞ」と答えた。
 彼がレストランに入っていくのを見ながら、私は気まずい雰囲気のタクシーの中に取り残された。つまり・・・人質。
 ほどなく夫はフランチェスコと一緒に外へ出てきた。
「彼の言うのは正当らしい。ごめんなさい、僕たち日本人だからここのシステムがよくわからなかったんだ。」と言いながら150000リラを手渡した。私は気まずさを紛らわすために夫を待つ間にせっせと折っていた千代紙の折り鶴を「ごめんね。」と言いながら運転手に渡した。
「グラツェ!」運転手はにこっと笑ってそれを受け取ってブーーーーッと帰っていった。1件落着!・・・しかし待てよ、来るのに8千円、帰るのに8千円しめて昼食の交通費だけで1万6千円!さて昼食の値段は?

 樽のようなフランチェスコに歓迎の包容を受けながら私の頭の中はめまぐるしく計算機が動いていた。
 店の中に案内されると思ったよりずっと広く、教会の日曜礼拝が終わった人たちや子供の誕生日を祝う親族のパーティが開かれていたりでとてもにぎやかであった。
何はともあれ、やっとテーブルにありつけた。まずはシチリアのワイン、コルボでも開けましょう!コルボは私のお気に入りのワインの一つだ。
 このくらい田舎の漁師町ともなると私達のような日本人はとても珍しいらしく、『ジャッポネーゼ!』とか『ジャッポ?』とか言う言葉がしばらくの間飛び交っていた。でもでもワインの方が大事な私。
「あああーっ!どうでも良いけどやっぱり本場で飲むコルボは格別!」
さあ本場のシチリア料理を食べるぞう!

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素敵な人々へ
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最終更新日: 2010/08/29