失語症記念館
南イタリアの旅

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43.旅は道連れ

2003年 4月:

 ギッシ、ギシギシ(ベッドの軋む音)、バサッ(布団をはねのける音)、ダン、ダン、ダン(彼の足音)、ギギーッ(ドアを開ける音)、バターンッ!(ドアを閉める音)シャカシャカ(パジャマを脱ぐ音)・・・シャーーーーーッ(カーテンを閉める音)。・・・・・ジャージャージャージャジャーーーーーーーーーーーーーーー(シャワーの音)。そしてこれは結構長く続く!
「プハーーッ、プハーーッ」←顔を洗いながらなぜか夫はこういうふうに叫ぶ。
 浅くなってきた眠りを突然中断させるこれらの音の洪水。だいたいにして私の目覚めはこのようにして台無しにされる。
 海外に来てシングルルームを二つ取る変な夫婦はあまりいないだろう。でもまゆみはあえてそうしたいと切に思う。
 「僕の土踏まずは絶品さ」と夫は言うけれど、あのスリッパ履きの足音は絶対に扁平足としか思えない。ドアの開け閉めから、室内を歩く音まで、たぶん大らかに育ったのであろう。人の耳のことなどこれっぽっちも考えていない。
 バターン!
「おや、起きたね。お早う!いいよ、疲れているんだろう?ゆっくり寝てたら。」濡れた髪をタオルで拭きながら、シャワーから出てきた夫が声をかけてくる。この何とも無邪気な笑顔が又腹立たしい。
「あのねぇ、うるさいんだけど!うるさくって寝てられないんだけど!」
夫の顔が急に険しくなる。
「なんだい、なんだい。人が気持ちよく、お早うって言ってるのに、朝からそんなにきつく言わなくてもいいんじゃないの?」
「寝てろって言っててうるさくっちゃあ、寝てらんないでしょうっ!!!」
「ああ、いやだ、いやだ。まゆみさんのヒステリー!おお、こわい。僕は悲しいよ。一生懸命君のために旅のプランも立てて、努力しているのに、こういう仕打ちをされてさぁ。」・・・静かにする努力もして欲しい。
 馬鹿馬鹿しくなってきた。ベッドからガバッと起きあがると、シャワー室に直行。シャワーを浴びながらむかついている気持ちを静めよう。
 旅が長くなると、体の疲れも蓄積される。結構自分では気付かないうちに緊張したり、気を遣っているのだ。それにいくら好きで結婚した夫とはいえ、通常、(24時間ずっと一緒)×(2週間)なんて事はない。いつも一緒じゃ、気分転換もままならないし、普段は我慢できることでも我慢出来なくなってしまうことだってある。けんかをしても夜になれば、又ホテルの狭い部屋で顔をつきあわせることとなる。旅の間は出来るだけ2人の間にトラブルはさけたいものだ。
 たとえば、今朝のような場面で迎えた朝、いらつきながら、無防備にバスルームに飛び込んで、夫が、気持ちよくおトイレを済ませた後だったりすれば、もう修羅場!夫は気分良くても私の溶岩ドームは確実に爆発でしょう!まして狭いホテルの一室を共有せねばならず、その一室にあるバスルームはもっと狭く密室ときている。臭いも我慢できないが、このままでは私自身が彼の臭いに染まってしまう。イタリアの私達が泊まるホテルだ。ランクなんてしれたもの、換気扇がそんなに良いわけないんです。だからといって夫に「ロビーにあるトイレに行って来い」とまでは言えない。はい、そうです。まゆみにとって旅の道連れ、必需品は『夫』ではない!『トイレその後に!』。出来れば無臭タイプよりも何か好みの香りがついていた方がよろしい。もしお部屋が湿気の臭いや煙草の臭いが残っていたりした時にもシュッと使えば、いい気分。皆さんも是非携帯用でお試しあれ。
 また、人によって旅の道連れの食べ物もいろいろだ。
 まゆみ的には、旅の道連れにカップヌードルを。凝ったものではなくあえてシンプルなものを選ぶこと。食欲が無くなったとき、外食に飽きてしまったり時間の無いとき、食事を食べ損なったときに便利です。まあ1個か2個もあればいいけれど。食べなかったら、現地の人や現地に住んでいる日本人にあげると非常に喜ばれる。特に南イタリアあたりだとイタリア料理以外の店を探すのに難儀するので、たまに食べると心が弾みます。ただし、ここで一つ注意を!ヴェネツィアのホテルで、お湯をもらおうとしたら、ボーイさんがニコニコしながら、カップヌードルにエスプレッソ用の熱湯を『ジュボボボッ!』と注いでくれた。3分待って開けたら、あまりの熱さと圧力のせいか、フニフニの麺になっていてラーメンと言うよりはラーメン味の別物に変身していた。
 イタリアでカップラーメンを食べるなら、しかもエスプレッソ用のお湯をもらう時は、直接注がず、ポットに一度入れてもらってから使おう! 

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最終更新日: 2004/08/13