失語症記念館
南イタリアの旅

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9.ノルマン王宮近辺

2002年 4月:

 地中海の十字路とも呼ばれるシチリアは、幾多の民族が植民したり支配を重ねたために多様な文化の残り香が漂う島である。イスラムやギリシャの影響も強く受けているようだ。
 さて、パレルモの見所が集中しているという旧市街から散策を始めよう。イタリア北部と異なる点。。教会や礼拝堂の飾りや絵は、南部のそのほとんどがモザイクで仕上げられていると言うこと。その美しさとスケールの大きさには驚かされる。

 ノルマン王宮には歴代の王が住んでいたらしいが、現在はシチリアの州議会堂として使われており、入場できるところが限られていて、公務員らしき人たちが頻繁に出入りしている。入場にも人数制限があるようで、一定の人数ずつまとめて時間ごとに入れていく。大型バスがどんどん到着するので私達の後に長い行列がすぐにできた。
年配のフランス人とドイツ人の団体の間に挟まれながら、王宮の中へ。
 パレルモ観光のハイライトと言われている宮廷付属礼拝堂(パラティーナ礼拝堂)は王宮の2階にあった。アラブ・ノルマン洋式だそうだ。
 前にドイツの礼拝堂ですさまじく大きなアーチの中の金色に輝くキリスト像の絵を見て圧倒されたことがあったが、ここも金ぴか!しかも全部モザイク!大理石のア−チは全てモザイクで埋め尽くされている。良く見るとモザイクの中にはトルコ石や珊瑚、ラピスラズリなどもはめ込まれている。礼拝堂全体がまばゆく輝き、そこら中に聖人やら天使やらがひしめいている。そういえば、ローマのシスティーナ礼拝堂の中も絵画がにぎやかであった。あそこは修学旅行のイタリアの子供達がたくさん来ていて、これ又にぎやかというか、けたたましくて厳かなんて言う雰囲気はみじんもなかった。
「フムフム・・・あれがキリスト教美術の最大傑作と言われている聖ペテロと聖ペテロを従えた玉座のキリストかぁ・・・」ううう・・・そのきらびやかさに、大きさに、モザイクの細かさに・・・上を向きっぱなしの私は眩暈がしてきた。12世紀の頃造られたらしいが、その頃は今みたいな建築機具など無いだろうし・・・改めて宗教の力の大きさを実感。

 クラクラしてきて下を向けば、床面のモザイクがこれ又すごい。コズマーティ洋式というイスラムとビザンチン文化の融合だという。
 私はキリスト教信者ではないが、一応十字を切ってみたりした。
 キオストロというのは回廊のことである。歩きながら瞑想をするための廊下だという。いろいろなところでこのキオストロを見たがそれぞれに特徴があった。ノルマン王宮の中にも回廊があったが、ここにも見事なモザイクがありしばし目を奪われた。

 しかし、観光とは本当に歩く。てくてくてくてく・・・。四つ辻にある建物の壁の彫刻が素晴らしいと言われるクワットロ・カンティに向かっているはずなのになかなか見あたらない。確かにここら辺の筈なのに。ふと見上げれば、交差点に面している四つの建物全てに涎掛けのような大きな布がかけられている。良く見ると布にどうやら、そこにあるべき彫刻の絵が描いてあるらしい。何と工事中。その布達は風に吹かれて、描かれている彫刻の絵はフニフニしていて何とも心許ない。遺跡や古い建造物、はたまた美術品を見る旅はしばしば、修理中とか工事中というこちらには全く遠慮無しの仕打ちを受ける。京都や奈良の寺院もそうだ。今回、おまけにプレトーリア広場の有名な噴水とそこの像も修理中で、覆いが被されてあり全く拝むことができなくて残念であった。
 ここまで歩いてくる途中に沢山のキリスト教関係のお店があった。キリストやマリアの小さな絵が入った額とか、像等が手頃な値段で売っている。何となく成田山の参道のような風情である。近くに牧師さんの学校もあるようだ。

  お腹が空いたね。観光しながら食べるところを探しましょう。ベッリーニ広場に面したビザンチン洋式のガラスモザイクで有名なマルトラーナ教会と三つの赤いドームがお茶目なだけのつまらないサン・カタルド教会を見てそこでお昼にすることにした。
 でもビザンチン洋式ってどこへ行っても金ぴか!キラキラしていてとっても好きだ。
 リストランテ・ピッザ・ベッリーニというレストランへ入った。カプリチョ−ザを食べながらコルボを飲む。カプリチョーザとはミックスピザのこと。ピザは皮が薄くパリッとしていて、とても美味しかった。あと私の好きな一品。スパゲッティ・デ・マーレ。これはだいたいどこで食べても美味しい。魚市場近くのレストランだったりすると本当に最高。
 南イタリアでイタリア料理以外を食べるのは難しい。中華料理はほとんど見かけない。イタリアンマフィアの世界に中国マフィアが入り込めないせいだろうか?上海にはイタリアンレストランはたくさんあるのだろうか?疑問だ。

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最終更新日: 2010/08/29