失語症記念館
南イタリアの旅

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12.バスの時間

2002年 4月:

 シチリア3日目。今日はアグリジェントに行く日だ。出発は6時。もうタクシーは手配済み。

 まゆみ、今朝もさわやかな目覚め。時計を見ると1時半。はいはい、時差ボケによる早起きも連続してくるとそれなりに心に余裕ができる。やることといったら、昨日の続きしかない。シックス・センス第3巻に手を伸ばす。途中でまた怖くなってしまったので、先に結末を読んでほっとしてから、又読み始めた。おかげで3冊一気に読み終えた。時差ボケも時には有意義な時間を作り出すじゃないの。でも もう1度読み返す気にはなれないので、夫に贈呈しようとして断られ、この3冊はその日のうちにゴミ箱行きになった。

 読み終わってもまだまだ時間が残っている。仕方がないので、今日行くアグリジェントの勉強。普段の旅では余り予習をしておかない私はいつも夫に「旅の楽しさを半分しか味わっていない!」とバカにされている。でも私の旅はいつも感覚的な楽しみ方なので、本人はいっこうに気にしていない。そこが又、几帳面な彼にはむかつくところなのか。

 ほう、アグリジェントはパレルモからバスで2時間15分かかるのか。シチリアの西の方なんだ。2月にはアーモンドの花祭り?4月は何もないのね。「アグリジェントを見ずしてシチリアを語らるべからず・・・」なんて言葉があるんだぁ。じゃぁ、私は見に行った後シチリアを語っても良いわけね。

 5ページ程度の写真入りのガイドブックを見たところで、すぐに終わってしまう。何回も読み返したり、これから行くナポリのことやソレントの方までページをめくって勉強する。「おお、カプリ島ってこんなところにあったのかぁ。」「なにぃ!青の洞窟はここから行くんだ。じゃあ、私も行くわけだ、楽しみぃ」・・・夫が聞いたらあきれて涙の出るような知識を今詰め込んでいる私。

さて、6時に頼んだタクシーに乗るためには5時くらいに活動開始。
「朝だよ!朝ですよ!起きて起きて!」
「なんだよぅ。君は何でそんなに朝から元気でうるさいの?がたがたもぞもぞ、一体何時から起きていたんだい。・・・もう2日続けて夕飯も食べていないんだよ。僕は辛いよ。」
「1時半だよ。」
「あのね、今晩はどんなことがあっても一緒に夕飯食べに行くからね。寝ながらでも食べろよ!」食い意地の張った男である。

 タクシーは6時ぴったりにホテルへ。すぐに駅に着いた。
酔っぱらった浮浪者がそこら辺に転がっていたりするが、早朝の駅前はとても静かである。バス停までてくてくと歩いていく。
「まゆ、何か食べようよ。」油断はできない。イタリアだからバスの時間が少しくらいずれてもみんな気にしない気がする。サンドイッチなど買っているときにブウウッーなんて行かれてしまったら、まだシーズンオフだから、又2時間近く待つことになるのだもの。こういうことだけは素早い夫が、しっかりアランチーニをゲットしてきた。
 これはシチリアの揚げ物の一つである。丸いボール状のライスコロッケみたいな物。ミートソース風味やサフラン風味になっていてチーズや刻んだ野菜などがご飯に混ぜてある。私はどちらかというとミートソース風味の方が味にメリハリがあって好きだ。街角では、大きめのおにぎり程度の大きさで売っているが、レストランなどではもう少し小さい物がオードブルの1品として出てくる。シチリアはオードブルにも揚げ物が多い。どちらにしても日本人には結構ボリュームがある。

 アランチーニを頬張りながらバスが来ないかきょろきょろ。バスラインには発車を待つバスが停まっている。開け放たれたドアから最前席に座ってハンバーガーにかぶりついている年配のご婦人が目にはいる。イタリア人はよく食べる。あの年になってもあんな大きなハンバーガーを朝から食べてしまうんだ・・・と・・・そのご婦人は食べ終わったと思ったらあっという間にその包み紙を丸めてバスのドアからぽーんと捨てたのだ。こういう光景をイタリアで良く目にするのだが、どうしても馴染めない。

 7時になったがバスが来ない。ガイドブックに書かれている観光地行きのバスがどんどん来るのにアグリジェント行きが来ない。バスの時間は、バス停ではなくバス会社のオフィスの窓ガラスに貼り出されている。バス会社も行き先によって異なる。そこには8時と書いてあったが、オフィスが休みだったので不安を消すためにバスターミナルへ行き、バス会社の人に確認したのだ。バス会社の人は親切に周りのバスに聞き回ってくれて、確かに私の時計を指さして7時を指し「セッテ、セッテ、(7という意味)」と繰り返したのに。

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最終更新日: 2010/08/29