失語症記念館
南イタリアの旅

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13.イタリア人の親切

2002年 4月:

 やっぱりバスは8時きっかりにやって来た。頭に来るなぁ。確認した方が間違っているなんて信じられない。バス会社の張り紙を信じておけば良かった。普段やらないような確認などするとこういうことになるのかなぁ。結局バス停の前で今か今かと1時間40分も待ってしまった。待ちくたびれたが、バスに乗り込んで一安心。バスを待つ間に夫が調達してきた、サンドイッチのような物を少し食べる。バスは厳かに発車。駅から住宅地を抜けると後は本当に田舎道となる。ああ、やっと座れた。立ちっぱなしで待っていたので腰が痛くなったぞ。どれ、又ガイドブックにでも目を通そうか。
『イタリア人は親切だ。道を聞かれたりすると、教えてあげようという気持ちが強く、知らなくても思わず適当に答えてしまうことがある。危ないと思ったら3人くらいの人に確かめた方がよい。』イタリア在住の日本人のコメントが出ていた。こう言うのは親切というのだろうか?いい加減というのだ!

 でもこのような場面に何度も出くわすことになった。本当に親切なのかなぁ。でもその折々相手を憎めないから不思議!
 故池田満寿夫氏がどうしても見たかったのに展示替えや貸し出しでなかなか見られなかったという別名「お尻のヴィーナス」がナポリの博物館にある。それを夫が見たいというので、そのヴィーナスの名前を書いた物を係の女の子に見せ、『どこにあるのですか?』と尋ねたことがあった。
 イタリア語で聞いた私に彼女はこぼれんばかりの笑顔で途中まで案内してくれるという。向こうの博物館は気が遠くなるほど大きかったりする。突然立ち止まった彼女はここまで来れば大丈夫という顔で、
「OK!ここの突き当たりを右に行って。すぐにわかるから。レフト、わかる?レフトよ。」
彼女の手は右を指している。イタリア語も右と言うが、英語では大きな声で左だという。
「右ですね?右!」
「そうそう、右!レフトレフト!」
「ありがとう!」
「どういたしましてぇ!」にこやかに去っていく彼女。
・ ・・レフトは左だよ・・・なんて、言えなかった。にこやかにそして自信に満ちた大きな声で・・・やっぱり憎めないでしょう。
 街角で地図を広げて場所を聞いたりすると一生懸命聞いてくれる人が多い。ただし、土地勘のない人に聞いても一生懸命考えて一緒に悩んでくれたりしちゃう。一緒に地図とにらめっこして時間が過ぎる。
「ごめんね。私ここに初めて来たからわからないの。」
「ああ、そうですか。ありがとう。(最初に・・・悩む前にそういってよ!)」一緒に困ってくれて考えてくれるのだから親切なのかなぁ。わからない。確かに親切ではあると思うがちょっといい加減だ・・・ということにしておこう。

 シチリアの道路網は日本の四国に似ているような気がする。海沿いはぐるりと道路が整備されているのだが、真ん中を貫く道路がない。パレルモとアグリジェントは直線距離でみればそんなに遠くないが、道がない。迂回していくので道のりとなると大分距離が増える。でもおかげで、行きか帰りに天気が良ければシチリア最高峰のエトナ山を拝むことができる。標高3340メートル。ヨーロッパ最大の活火山だ。
 私達もバスの窓からエトナ山を見た。夫はひどく興奮していたが、私は特に大きな感動もせず、ふーんという感じだった。ところが、私達が帰国して1ヶ月たつかたたないうちにボーンと噴火しちゃったのだ。私の無感動が火山の女神のお怒りに触れてしまったのだろうか?日本でエトナ山噴火の映像ニュースを見て又興奮に興奮を重ねる夫であった。彼はジオグラフィックのエトナ山噴火特集を今も大切に持っている。
 さてパレルモから本日の目的地までバスに揺られて2時間15分。疲れた体にバスの揺れが心地いい。なになに、アグリジェントは考古学地区と中世・近代地区に分かれているって?地図を見ると結構離れているじゃないの。何よ、火曜日の今日は国立考古学博物館は9時から13時までって。じゃぁ、ここを先に見なくちゃならないわけだ。ガイドブックに目を通しておいて良かった。向こうに着いたらインフォメーションセンターですぐに地図をもらわなければ。帰りのバスの時間と場所もチェックして・・・。なんて考えているうちにまゆみ夢の中へ!
「まゆ!まゆ!すごい・・・すごいよ!起きて!起きて!」
夫にすごい力で揺さぶられ、まゆみ、あえなく覚醒。

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最終更新日: 2010/08/29