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24.サン・セヴェーロ礼拝堂 |
2002年 3月: |
まゆみ一押しのナポリの礼拝堂がサン・セヴェーロ礼拝堂である。外は暑いが内部はひんやりとしている。礼拝堂の入り口のチケット売り場は、ちょうど日本の銭湯の番台を思わせるようなちゃちな作りで笑えるが、内部に展示されている作品の質の高さに感動の嵐。すでにもう教会と言うよりは美術館という雰囲気だ。祭壇前に等身大の大きさで横たわっているジュゼッペ・サンマルチノによる『ヴェールに包まれたキリスト』はここの目玉であり本当に息を呑む。大理石で出来ているのだが、キリストを包んでいるベールの質感は柔らかでなめらかな薄い布そのものなのだ。その布を通してキリストの骨格や肌の感じが手に取るように分かる。鳥肌が立つほどに美しい。
ガイドブックにも必ず写真が出ているこのキリストであるが、やはりあのひんやりしてシーンとした礼拝堂の中でしかもさわれるような場所から眺めるとその感動もひとしお大きい。これらの作品は礼拝堂があってそこに奉納されたのだ。だから礼拝堂の中にあって初めてその美が、形が、完成されるのだ。これらの作品を他の場所へ移動してしまった時にはもうすでに完成されたその美とは異なる形になってしまうのだと思う。まゆみ、30分このキリストの前に佇む。
この制作者やその弟子達が好んだのであろうか、ここに納められている作品は布に包まれていたり、網が体に巻き付いていたりする所謂透かし彫りといった構図が多い。網にとらわれた人物像(神様だったかな?)などは中国の翡翠の透かし彫りを彷彿させる。どうやって彫ったのだろう・・・そんな疑問も湧いてくる。
さて、この礼拝堂の持ち主だったライモンド公はオカルト現象に興味を持っていたらしい。科学者であり文学者でもあったと言うが、いろいろな実験や解剖などを密かに行っていたという変人奇人である。いまだにその方法が解明されてないらしいが、人体の血管だけをとりだして保存したものが地下室に展示されているという。怖いもの見たさのまゆみ、もちろん見学。足取りも軽やかに階段を降りていく。
地下室は何となく気味が悪かった。ここで彼は一体どんな実験をしていたのだろう。
1人でクチュクチュと死体の内臓なんかをいじり回していたのだろうか。部屋は幾つにも別れていて、その昔使っていたらしい彼の解剖用の器具が展示されていたりする。
彼についての情報を先に仕入れてしまっているせいか、肖像画を見てもただの変態奇人にしか思えなかった。もしかしたら親切な人だったかもしれないのに、先入観念や思い込みって怖いわ。
いよいよ例の人体の血管展示室に。なんだか非常に怪しい。ガラスケースの中に等身大と言うにはやや小さめであるが人体をかたどったものが鎮座していて、そのまわりを夥しい数の血管だろうらしきものが張り巡っている。足や手の先の毛細血管らしきものもやけにしっかりとしていて太いし、赤と青できっちりと動脈と静脈が色分けされているのもとっても怪しい。それによくよく見ると電気コードの皮をむいたときに出てくる色の付いた銅やニクロムで出来ている線によく似ているのだ。本当に体の一部なのか?怪しすぎる!外人達も皆めずらしそうに覗き込んでいるが、その顔は皆ニヤニヤしていたり、困惑したりだ。どうも信じがたいのであるが・・・でも笑えるので見る価値はあると思う。
外に出ると青すぎる空が目に痛い。警察官がたくさん歩いている。観光収入を上げるために治安を良くしたいという考えかららしい。
ピザをかじった後、礼拝堂の近辺にある教会などをチョンチョンとまわり、今晩から4泊ほどお世話になるホテルへ。ナポリは治安が悪いので、ホテルはソレントに取った。そう!『帰れソレントへ』のあのソレントである。今朝着いた港まで戻り、荷物を無事ゲットし、フェリージェットでいざ出発。
ナポリからソレントへは電車で約1時間。その途中にポンペイもある。船でも同じくらいかかるが、せっかくの南イタリアの旅。海を堪能しなくては。美しいソレントの海岸線を見ながら、海から入っていくのだ。またソレントからは、アマルフィー岸やポジターノ、青の洞窟のあるカプリ島も近いし、港から船が出ているので観光にはなかなかフットワークの良い場所である。そしてリゾート地としても歴史を持ち、
高級な住宅地にもなっているので、治安もよろしい。
船に乗って緊張がゆるみ、青い空と海に心を洗われながら、うつらうつらしたあたりで、私達は、ソレントのポルト・ピッコロへ入港。直訳すると小さな港。もう一つの港はポルト・グランデ、大きな港である。イタリア語で言うと可愛い感じがするが、あまりにも安易な命名である。
さあ、タクシーに乗って、ホテル・カラベルへ。 |
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設営者:後藤卓也
設定期間:2001年3月15日〜2001年12月31日
管理:記念館
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最終更新日: 2002/07/12