失語症記念館
南イタリアの旅

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35.グロッタ・アズーラを目指せ

2003年 1月:

 ソレントからカプリは近い。カプリからグロッタ・アズーラへの道が開ける。
イタリア語でグロッタは『洞窟』、そしてアズーリは『青』。つまり『青の洞窟』!
 2001年4月29日日曜日、まゆみはとうとう憧れの地『青の洞窟』を目指すこととなった。7時半にホテルのオレンジ畑を見ながら朝食。今朝もオレンジとレモンがたわわに実っているのがよく見えた。明日は早朝にここを出るので、朝日に輝くこのオレンジ畑を見ながらの朝食は今日が最後だと思うとちょっと淋しい。ミルクたっぷりのカプチーノを飲みながらオレンジとレモンの輝きを脳裏に焼き付ける。
 昨日届くはずだったクリーニングがまだ届いていないのが気になる。私は何を出したのだったか。夫が沢山出したのだけ覚えている。朝食の後、フロントに寄って
「昨日届くはずだったクリーニングが届いてないの。明日早くにここを出なければならないから、今日中に届けてくれないと困るの。」と念を押す。
「おお、マダーム、OK、OK!昨日は電話が通じなかったけれど今日は大丈夫だ。安心してカプリに行って来い。帰ってくるまでには絶対届いているからさぁ。」・・・ここはイタリアでそしてあんたもイタリア男じゃない。信用できないよ。安心できないよ。にこやかに対応してくれる2枚目のフロントマンを見ながら、ため息が出るまゆみであった。
 バスでポルト・ピッコロ(小さな港)へ。ここからはカプリ行きの船が沢山出ている。フェリーだと40分、ジェットフェリーだと20分で着くという。船会社が幾つかあって乗る船の大きさや性能で値段が異なるようだった。また会社によって乗り場も違うので、切符を買った後乗り場を捜すのに苦労して汗をかいてしまった。行きは普通のフェリーだったので10000L(約700円くらい)。帰りはジェットだったので15000Lだった。
 ああ、潮風が気持ちいい。やっと乗り込んで安心したまゆみは迂闊にももう青の洞窟に着いたかのような安堵感を味わってしまった。まゆみ、勉強不足!
 カプリに着いた。下船すると人が沢山並んでいる。つま先だって並んでいる人たちの方を見ると「10:30」と書いた案内板が見えた。
「ペル・カプリ?ペル・カプリ?」
「そうだよ。カプリ行きだよ」
「うわあ、ラッキーだったね。あと30分くらいで船が来るんだね。並んでよう!」どうやら私達の前に並んでいる人たちはカプリ行きの切符を買うためにここにいるらしい。先頭の人のすぐ脇に小さな掘っ建て小屋のような切符売り場がある。でも窓口は閉まっていた。30分たっても切符を売り始めない。みんないらだっているのが分かる。せめて回数券を出すとか、時間ごとの切符を一斉に販売する等の工夫をすればもう少し観光も効率よくいくと思えるがそういう融通が利かないところがイタリアでもある。
 やっと開いた窓口は次に出る船の分しか切符を売らない。並んでいた甲斐がありようやく乗船券をゲット。1人10000L 。後ろを見ると目が回るくらいの行列になっている。やっと船が来たと思ったら、その船はあっという間に後ろから来た団体客を乗せていってしまい、皆を唖然とさせた。でもこういう時は言葉は違っても皆心が通じるから不思議だ。ドイツ人、アメリカ人、フランス人、その他諸々の外国人と日本人のまゆみ達。それぞれの母国語で
「信じられないなぁ、イタリアってこれだから腹立つよ!でもイタリアだからなぁ」とため息にもならない半分諦めた表情を浮かべながら愚痴を言い合ったのであった。
 やっと来たボートは20名くらいを乗せてやっとやっとシュッパーツ!
「ふうう、やっと乗れたね。腰が痛くなっちゃったよ。さぁ、青の洞窟へシュッパーツ!」
「これで行くんじゃないよ。」
「えっ?これで青の洞窟に行くんじゃないの?」
「ガイドブックを見てごらん。洞窟の入り口近くで4人くらいしか乗れない小さな手漕ぎボートに乗り換えるらしいよ。」
「なんですと?」にわかに緊張するまゆみ。ガイドブックをパラパラとめくる。なにやら怪しい投稿も多く目に付く。ええーっ?10000Lを出さないと手漕ぎボートをモーターボートまで戻さないと船頭に脅かされたって?(後で考えたら700円くらいのもんだけどね^。^)チップの額は決まってない?ボートも自分では選べないらしい・・・ってことは又洞窟の前でボートを乗り換えて、そのボート代も払い、そしてチップも必要なの?心の中で英語のできるイタリア人観光客と一緒になりますように!親切な船頭さんのボートになりますように!と強く強く念じるまゆみであった。

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最終更新日: 2003/01/04