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| 特にリハビリ病院などは介助半分リハビリの介助半分の家政婦がたくさん院内で寝泊まりしていた。非常に質の高い気持ちの優しい家政婦もいる代わりにその反対の人もいる。この頃の家政婦は、当たりはずれがとても大きかったのである。まして言葉がうまく伝達できない失語症の患者さんにとっては、この当たりはずれは大きく入院生活を左右する。失語症を理解できない家政婦にとって、話せない、読めない、書けない、わからないの失語症者は、彼女達の目には単なるバカになってしまった人としか映らないらしい。私達がアンテナを高く上げていないと患者さん達に悔し涙を流させてしまうことが多々あるのだ。重度の失語症者とのコミュニケーションはどこか連想ゲームに似たところがある。だからどんな些細な情報もなるべく見逃さないように書き留めておくと、彼らの訴えを理解するのにいつか必ず、役に立つ。だからしばしば、患者さん達の過去のことなど奥さんよりも私の方が知っていたりするのだ。
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時々、談話室などで、家政婦たちがたむろしている時に、
「○○さんの付き添いの方はおられますか?」
「はい、私です。」
「○○さん、ここのところ、うんちが出ていないでしょう?お腹が張っていて苦しいと言ってますので、熱くしたタオルで、お腹暖めて、その後、時計の針と同じ方向に少しマッサージしてあげて。それで出なかったら、看護婦さんに言ってお薬もらってあげてね。」
「○○さんが言ったんですか?全然しゃべらない人ですけど」
「言語室に来るとみんなお話ししてくれますよ。付き添いさんが親切にしてくれたこととか、悲しかったこととか、いろいろね。だって私はしゃべれない人たちとお話しするのが仕事ですから。1時間もあればだいたいわかっちゃうんですよう。」
「わかりました。さっそくやります。」
「よろしくう。うんちが出たらきっと喜んで来週私に話してくれますよ。それではごきげんよう。」(高いお金で雇われてるんだからしっかりやってあげてちょうだいねぇ)です。
意志を伝えるというのは何も音声だけではない。目や、表情や、絵や文字や、ジェスチャー、イエスーノー反応などいくらでもある。それに面談の前に診療カルテに目を通しておけば体調だってわかっちゃう。
私は茨城県で3人目のSTだった。水戸では初代である。つまり言語治療とか、失語症なんて、ほとんどの人が知らない町だったので、結構はったりも効いてしまう時代だったのだ。こういうパフォーマンスで、少しの間は、失語の患者さんも待遇が良くなるのである。でも本当に失語症者は何でもわかってるんだから、侮ってはいけないのだ。必ず言いつける。犬や猫だって不本意なことがあると言いつけに来るのだ。人間様の方がやっぱり病気になっても上のはず。
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